砂漠のお仕事 〜機甲技士は大変です〜

以前より芥辺境には砂漠存在する。
非常に粒子が細かく、特に強い季節風に乗れば黄砂となり街にまで被害が出ることも屡々。

機甲技士達はその中でも働くこととなる。
今日の勤労内容は『砂漠内で動けなくなった車の修理』という単純なモノだった…………。


熱い日差し、陽炎が歌う砂漠をバギーが走る
ゲドー「確かこの辺だったよねぇ?」
街から森林街道を抜けて、走行するバギー内には2人…正確には1人と一匹の姿があった。
藩王府へ航空中継で救援要請があったのだ。逆探知で場所は分かっているのだが如何せん突き止めるのと移動するのは全然違うモノだ。
日差しがバギーの車内温度を上げる。エンジンが車内を冷やそうと冷風を出すがエンジンの回転数が上がり自然と温風に感じてしまうジレンマを感じながらもバギーは走る。
真夕「そうだよ。もうちょっと詳しいデータ来るからちょっと待ってて」
チチチ……
運転中のゲドーは後部座席に座る相方に一言。そこにいるのは灰色熊(グリズリー)の真夕だった。
ゲドー「頼むねぇ」
真夕「はいな」
真夕は灰色熊だが歴としたゲドーと同じ機甲技士で、頭部の一部がサイボーグ化されており外見上はそう変わりは無いのだが作業中の彼の瞳をみればわかる。
瞳の中に無数のモニターが映りか変わりしている。
眼球回りがサイボーグかしており、網膜内に投影システムを搭載してデータリンクを行うタイプの改造を受けている。
ゲドーはバックミラー越しに真夕の様子を見ている。集中すると固まる様は物置のように感じることが良くあるが、やはり目を見ると全然違ってくる。
真夕「そろそろ見えてくるはずだけど。どう?」
データリンクを終えて結果を算出したのだろう。真夕が訪ねる。
ゲドー「丁度見えたよ」
コンマ数秒の回答だった。


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どかん。
青い空に黒煙が上がる。そこは砂漠の真ん中、風が吹けば風景が変わり頭上を太陽が揚々と通り過ぎるだけの空間。
白河「これは無理かなぁ」
煙の元は1つの車だった。
輸送車両だろうか、コンテナを詰んでいるトラックのエンジン部分より黒煙が舞い上がっているのである。
彼、白河輝はいつも通りの貿易港から藩王府へのお使い(と言う名の買い出し)を行っていた。
藩王府もちゃんと国元から食料を買っているのである。律儀なモノです。
白河「まさかこんなド真ん中でエンジントラブルとはなぁ」
運転席で1人愚痴りながら足を組んでいた。


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少し前に時間は遡る。
貿易港からの帰り、いつも通りのトラックにいつも通りの道、いつも通りのお使い。
白河「帰ったら、街の様子と時計塔の調子見て…夕飯の支度か」
メモ帳片手に運転する。前を見なくて大丈夫か?と思われるがそもそもそんなもの無いので事故が起こることもないとタカをくくっていた。
白河「あれ?」
アクセル踏んでも前に進まない?
幾ら回転数を上げようにもスピードが上がらない。
それどころか、減速していき、いつしか止まるはめになった。
エンジンにトラブルがあるのかな?と思いドアノブに手をかける。
が、外に出ようにも外は太陽が照らす灼熱の大地。
あたりを見回しつつどうしようか思案していると、砂漠の丘陵で出来た日陰が見えた。
白河「あそこまで持って行くか…」
日よけのマントを被りつつ、ギアをニュートラルへ変更し外へ出る。
白河「ハンドルの固定よし、ギアも平気だね…よし」
腕を持ち上げる、人の手ではない、機械の手だ。
その腕からは更に無数の手が生えだしてくる。
白河「出力50%、下手に押すと壊れるから手加減しないとね…いっせーのーせっ!」
1人なのにかけ声の意味はあるの?というツッコミは無粋である。

車は白河の無数の手によって押し込まれ、日陰までに持ち運ばれた。
トラックの後部座席下から断熱シートを取り出し簡易的なテントを作り始める。
丘陵の頂上に折りたたみで仕込んで置いた2,3m程の棒を打ち込み固定、そこからトラック上部を覆うようにシートを伸ばし、脚立棒に組む。
白河「さって、どうしたのかな?」
トラックのボンネットを開けて中を見る。焦げ臭い…。
白河「熱にやられたなぁ。こりゃ。応急処置だけでもしておくか。」
腕からまた無数の手が出てくる。
これでもかと言うくらいにパーツを分解していくと、1つ気付いた事があった。
白河「ベルトが焼き切れてるわ…」
エンジンベルトが焼き切れていたのである。
これでは幾らエンジンを蒸かそうにも進まなくなる訳である。
白河「はぁ…これは不味いな…。」
エンジン部位の調整が甘かったのかな?
だけど、いつもの外気温や、エンジン熱だけでは焼き切れることは無いはず…?
白河「昨日痛んでいたから変えていたのに…変だな熱っ?!」
肘(人体部位)が触れた。エンジン内の熱が以上に高い。
コレはこっちが原因か…と思った瞬間。

ぶつん。

白河「ぶつん?」
さらに焦げ臭い匂いが立ちこめた。
他に焼き切れた所が出て来たのだろうか。
白河「はぁ…パーツもないし、こりゃ連絡するしかないわな」
丁度、空には巡回航空機の姿もあった…。

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ゲドー「おまたせー」
真夕「大丈夫かい?」
大体2時間。ようやく来てくれた。
白河「お疲れ様っす」
取りあえず、自分が調べただけでも状況を説明しておいた。
ゲドー「焼き切れちゃったのか〜。そいつぁ大変だねぇ」
白河「ええ。修理助かります」
バギーから道具を色々下ろし始める灰色熊(グリズリー)の真夕。
がちゃがちゃとエンジン内を弄くり回すゲドー。
真夕「バギーで白河君は送れても、コレは引っ張れないからなぁ。此処で直すしかないか。はい、マルチアーム。」
ゲドー「ありがと」
一瞬腕が切り離されると腕部が入れ替えられる。
外された椀部は真夕が回収、入れ込まれた腕部からは工具類が指先などから飛び出していた。
工具の回転音と一緒に作業を開始する。
白河「私の分のメカニックアームは?」
真夕「持ってきてないよ」
白河「そうですか。」
ゲドーさん1人での作業となる。
まぁ、2人がかりでやるには狭いので仕方ない訳だが。
ゲドー「やっぱり整備不良だねぇ。それに、ちょっと古いからかなぁ。あちこち痛んでる。」
仕方ない、結構前から使って騙し騙ししていたのもあった。裏目に出たか。
ゲドー「後は…うーん。ベルト以外が切れた音がしたと言っていたけど何処だ?」
あちこちがちゃがちゃと音を立てて探すが、一向に見つからないようだ。
白河「多分、配線のあたりじゃないですかね?ちょっと良いですか?」
作業のバトンタッチ。
配線部位の所まで多種腕アームを使い先程まで熱でさわれなかった所を分解していく…と。
白河「やっぱり…」
奥の排熱板付近のコードが焼き切れていた。
焼き切れ方も普通じゃない。
ゲドー「あー…こりゃボルトの閉め忘れかな?」
配線の両端には固定用のボルトがある。これはアースと排熱用の電動板の意味もあり、中途半端に閉めてあるとショートを起こしやすいのだ。
取り合えず、故障箇所を特定した面々は作業を開始し、作業は円滑に行われて30分程度で終わった。

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バギーを追うようにトラックがついていく。
ゲドー「(ザッ)エンジンの調子はどうだい?」
トランシーバー越しに、バギーから問われる。
白河「やっぱりこのトラックは引退でしょうね。エンジン内の温度上昇が非常に早い。」
修理と一緒に持ってきていた温度計を取り付けて、調子を見ながら走行していた。
速度メーターの左端にはデジタル温度計が結構な速さで上昇を続けている。
真夕「後5kmほどだから気を付けてね」
白河「了解。こっちも、愛しの時計塔が目の前にあるのに止まりたくはありませんからね」

バギーとトラックは、そのまま街へと続く森林街道へと入っていくのだった…

〜了〜


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